【ファクタリング】仕組みや種類、注意点などを解説
公開日:2020年03月25日
最終更新日:2020年03月25日
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ファクタリングとは、企業から売掛債権を買い取り、売掛債権の管理や回収を行う金融サービスのことです。赤字や負債を返済できない状況でも利用できるので、資金繰りに困っている経営者には魅力に感じるのではないでしょうか。
今回はファクタリングとは何かを分かりやすく解説します。
ファクタリングとは
ファクタリングは、入金待ちの請求書(売掛債権)を買い取ってもらい、決済日よりも早く現金を受け取れるサービスのことです。
売掛債権の買取金額は、手数料が引かれた金額になるため、本来入金される金額(売掛金)よりも少なくなります。
ファクタリングの特徴
手数料がかかりますが、その分メリットがあります。
・最短即日で現金化が可能
・信用情報に悪影響がない
・銀行融資よりも審査が通りやすい
・取引先が倒産しても回収義務がない
・担保・保証人なしで利用可能
これらのメリットから、急ぎで現金が必要な場合や融資が受けられない企業にとっては、重要な資金調達手段と言えます。
なぜファクタリングが普及したのか
ファクタリングが普及し始めたのは、つい最近のことです。それ以前は長いこと「手形」が掛取引のメインでした。しかし手形はピーク時の10分の1以下に減少し、今や「現金の後払」がメインとなっています。そのため、「手形割引」「裏書譲渡」による資金調達も減少しています。
ファクタリングの仕組み
ファクタリングには「自社」「取引先」「ファクタリング会社」の3社が関係します。
取引先のかかわり方によって、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」に分類できます。
2社間ファクタリング
「自社」と「ファクタリング会社」で手続きを行う「2社間ファクタリング」。仕組みは次の通りです。
①「自社」が「ファクタリング会社」に売掛債権を譲渡する ②「ファクタリング会社」が「自社」に売掛金の相当額を支払う ③「取引先」が「自社」に売掛金を支払う ④「自社」が「ファクタリング会社」に売掛金を支払う
③で「取引先」が入っていますが、ファクタリングの契約時に手続等を依頼する必要は原則ありません。そのため「取引先」にファクタリングを利用していることを知られる可能性は低いといえるでしょう。
2社間ファクタリングのメリット
・取引先の承諾を得る必要がない 取引先から承諾を得たり知らせたりする必要がないので、経営状況を知られる心配は少なくなります。 ・資金化がスピーディー 自社とファクタリング会社の2社間で契約が成立するので、取引先との交渉や手続きなどの時間を短縮できます。 ・利用ハードルが低め
中小ファクタリング会社が幅広く参入しているため、比較的審査に通過しやすい傾向にあります。
2社間ファクタリングのデメリット
・手数料が高め 3社間ファクタリングと比較すると手数料の相場は5倍以上と高い設定です。 ・大手では基本的に利用不可 大手ファクタリング会社では、2社間ファクタリングを提供していません。そのため中小零細業者から選択することになります。 ・取引先にファクタリング利用を知られる可能性はゼロではない 取引先にファクタリング利用を知らせる必要はありませんが、万が一知られた場合は重大な信用失墜となる恐れがあります。
2社間ファクタリングの契約までの流れ
①申し込み 決算書や納税証明書などの必要書類を揃えて、申し込みます。 ②審査 基本的に法人登記情報や債権譲渡登記情報、帝国データバンクのデータベース紹介などで確認されます。 ③契約 審査に通過すると、契約手続きに入ります。 ④入金 契約完了後、手数料などが引かれた金額が指定口座に振り込まれます。 ⑤回収 自社で売掛金を回収し、指定期日までに速やかにファクタリング会社に送金します。
3社間ファクタリング
3社間ファクタリングでは「取引先」が必ずかかわってきます。
3社間ファクタリングの仕組み
①「自社」と「ファクタリング会社」がファクタリングの契約と承諾をする ②「自社」と「取引先」がファクタリングの契約&承諾をする ③「自社」が「取引先」に支払金額の確認をする ④「ファクタリング会社」が「自社」に売掛金の相当額を支払う ⑤「ファクタリング会社」が「取引先」に請求金額の確認をする ⑥「取引先」が「ファクタリング会社」に売掛金を支払う
2社間ファクタリングと大きく違うのは、ファクタリング利用による債権譲渡を「取引先」に承諾してもらうことです。また⑥でも「取引先」が直接「ファクタリング会社」に行います。
利用のハードルは高くなりますが、手数料は大幅に低くなります。2社間よりも圧倒的有利な条件で利用できるのは3社間の魅力といえるでしょう。
3社間ファクタリングのメリット
・手数料が低め 2社間ファクタリングと比べると、大幅に低い手数料で利用可能。手形割引に近い金利で利用できることもあります。 ・大手業者もサービスを提供 大手ファクタリング会社を使えるので、悪徳業者とのトラブル回避につながります。 ・取引先との取引の透明性を確保できる 取引先の承諾が必要なため、健全な取引ができます ・売掛金回収の手間が不要 基本的に売掛金は売掛先から直接ファクタリング会社に支払われます。
3社間ファクタリングのデメリット
・取引先の承諾を得る必要がある ファクタリング利用を取引先に説明し、承諾を得る必要があります。 ・資金化に時間がかかる可能性 取引先への通知や承諾が必要になるため、現金化されるまでの時間がかかることもあります。 ・利用ハードルが高め 審査が厳しくなる傾向があります。
契約までの流れ
①取引先への打診
ファクタリングを利用したいことを相談し、承諾を得ます。
②申込
インターネット、電話、来店、郵送などで申し込み、必要書類を提出します。
必要書類の例
「決算書」「売掛金を証明できる書類」「納税証明書」など
③審査
基本的に以下のような項目が確認されます。
審査のチェック項目例
・法人登記情報
・債権譲渡登記情報
・帝国データーバンクのデーターベース照会 など
④契約
審査に通過できれば、契約手続きに進みます。
取引先の印鑑が必要です。
⑤入金
契約完了後、手数料などを割り引いた金額が指定口座に振込まれます。
⑥回収
ファクタリング会社が売掛金を回収します。
ファクタリングの種類
ファクタリングの種類は大きく分けて5種あります。
・買取ファクタリング ・保障ファクタリング ・一括ファクタリング ・国際ファクタリング ・医療ファクタリング
買取ファクタリング
買取ファクタリングは、「売掛債権の回収リスクの低減」「売掛債権の早期資金化」「債権のオフバランス化」を目的としています。
保証ファクタリング
保証ファクタリングは、売掛金の支払いをファクタリング会社が保証するサービスです。つまり、「倒産などで売掛債権が回収できなくなるリスク回避」を目的としています。
さらに与信調査をファクタリング会社が行ってくれます。
一括ファクタリング
一括ファクタリングは、支払手形の代わりとして導入された決済手段で、3社間での取引となります。支払手形の発行は、事務作業や印紙税などの負担が生じます。その負担を軽減できるため、取引先にとってメリットが大きいのが特徴です。
国際ファクタリング
国際ファクタリングは、「海外企業との輸出取引に対して発生した売掛金を確実に回収するため」のサービスです。
通常のファクタリングとは異なり、次の4社が介在します。
・輸出業者(ファクタリング利用者) ・海外業者(支払う側) ・日本国内のファクタリング会社 ・海外のファクタリング会社
未払いの発生・与信の調査など、不安を解消して海外と取引ができるようにと誕生しました。
医療ファクタリング
医療ファクタリングは、「診療報酬債権を利用」したファクタリングのことです。受け取りまでに2~3ヶ月ほどかかる診療報酬を早く受け取ることができます。
医療ファクタリングは名前の通り、「医療」にまつわるファクタリングの総称で、3つに分けられます。
・診療報酬ファクタリング ・介護報酬ファクタリング ・調剤報酬ファクタリング
医療ファクタリングの利用には、一般的に3社間の取引となります。
ファクタリングの注意点
ファクタリングを利用してみようと検討している、仕組みがよくわからない、という方は次の3点の注意が必要です。
・銀行融資に比べて手数料が高い ・債権譲渡によって取引先に知られる場合がある ・買取ファクタリングは闇金業者が存在する
銀行融資に比べて手数料が高い
ファクタリングは、銀行融資よりも審査が柔軟でスピーディーな反面、手数料はかなり高額になる場合があります。買取ファクタリングは「売掛債権の譲渡」のため、利息制限法は適応されず、金利(年率)に換算すると桁違いの金利に相当します。
2社間ファクタリングの手数料相場が5~40%前後とした場合、金利に換算すると60~500%になります。
買取ファクタリングを繰り返し利用した場合、短期間のうちに破綻するのは目に見えています。買取ファクタリングはやむを得ない緊急時に単発として利用することが賢明です。
債権譲渡登記によって取引先に知られる場合がある
買取ファクタリングの中でも2社間ファクタリングは、基本的に売掛先に通知は行わず、ファクタリング会社とのやり取りのみで契約が可能です。ただし、「債権譲渡登記」を実施する場合、売掛先が登記情報を確認することによって、知られてしまうリスクがあります。
闇金業者が存在する
買取ファクタリングは、法整備がまだ十分ではないため、闇金業者がファクタリングに目をつけている現状です。銀行等の金融機関と同じような感覚でファクタリングに申し込むのは危険なのでやめましょう。また利用者を騙すようなネット情報に踊らされないように注意することも必要です。
ファクタリングを検討する場合
「深刻なキャッシュ不足」「ファクタリング以外の有効な資金調達手段がない」。この2点に該当する場合、検討してもよいでしょう。ピンチを切り抜けるために、ファクタリングで一時しのぎをすると同時に、キャッシュフローの改善を地道に行いましょう。経営の立て直しに繋がります。
ファクタリング会社の選び方
ファクトリング会社を選ぶ際は、慎重に選ぶ必要があります。以下の点を必ずチェックしましょう。
・手数料など契約条件がはっきりしているか ・面談なしでファクタリングOKと勧誘しないか ・ファクタリング会社の所在地や代表者等の情報が明示されているか ・極端に甘い条件で勧誘しないか ・保証人や担保を要求しないか
焦りのあまり、甘い勧誘についと騙されることが多いものです。これらの点を必ずチェックして検討しましょう。