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個人事業主の節税する5つのポイントと方法

【法人保険】加入前に押さえておきたいメリット・デメリット

公開日:2021年02月23日
最終更新日:2021年02月23日
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企業経営にはリスクがつきもの。リスクに備えるために保険に入っておきたいところです。保険会社では様々な「法人保険」を用意しています。

法人保険に加入することでどのようなメリットがあるのか、またデメリットはどんなことがあるのかを押さえてから、加入しましょう。

メリット、デメリットのほかに、法人保険の概要や種類なども解説します。

法人保険とは

法人が契約者となる保険

「法人保険」とは、契約者が法人である保険のことです。また契約者とは保険の契約を結び、保険料の支払者のことです。

基本的には一般向けの保険の仕組みと同じですが、法人向けに特化した保険もあります。

ポイントは保険料の取り扱い

法人では保険料の支払いは「資産」か「損金」のどちらかに計上されます。このうち、損金に計上できるものは利益から差し引くことができるので、その年の税負担が軽くなります。

企業としては、基本的に損金として計上できる契約体型を目指すことになるでしょう。

経営者の万が一に備える

法人保険の基本的な契約体型は、「契約者・保険金受取人を法人」「被保険者を経営者」です。経営者に万が一の場合、法人が死亡保険金を受けとることができるので、経営資金に充てることができます。

経営者の経営能力や人脈が活かされている場合が多いため、経営者が企業に与える影響は大きいものです。万が一の場合は企業の経営が困難になる可能性もあります。

それを防ぐために経営者を被保険者として契約していれば、保険金で対策を打つことができます。資金的に余裕が出るため、経営の立て直しを図ることができるでしょう。

また保険金の受取人を後継者にすることで、事業継承を円滑に行うことも可能です。

万が一の場合、企業自体に相続財産として相続税が計算されるので、後継者に多額の法人税負担が発生する可能性があり、事業継承に支障をきたす場合がでてきます。

保険金を後継者が受け取ることで相続税の納付原資とできるので、スムーズな事業継承が可能です。また後継者に兄弟がいた場合でも、他の兄弟の相続分を後継者が現金で支払う「代償分割」などの対策もできます。

このように、法人保険は経営者の万が一に備えとができる有効な方法と言えるでしょう。

福利厚生とする

企業にとって人材は大切です。人手不足による倒産は上昇傾向にあり、人材確保は企業課題のひとつと言えます。従業員の福利厚生として活用するのはどうでしょう。

契約者を法人、被保険者を従業員とし、保険金受取人を満期金は法人、死亡保険金は従業員の遺族とします。

従業員の定年時に満期金を法人が受け取り、会社の規定に従い退職金として支給し、従業員が死亡した場合は遺族が死亡保険金を受け取るという方法です。

「福利厚生プラン」などの契約体型で、企業は福利厚生を充実させながら保険料の一部を損金として計上することができます。税引き後の利益から福利厚生費を支払うより資金効率がよくなります。

法人保険の種類

法人が契約する保険の種類を見ていきましょう。

定期保険

定期保険は、ある期間に被保険者が死亡した場合に死亡保険金が受け取れる保険です。

一般向けにも広く普及している保険で、基本的には生存保険金はないため解約返戻金も少ない、いわゆる「掛け捨て」で、保険料の損金算入が比較的大きく認められています。

法人保険のなかには、あえて保険期間を長く設定し解約返戻率を高く設定し、「長期平準定期保険」や「逓増定期保険」と呼ばれているものもあります。

被保険者の死亡に備えることはもちろんですが、返戻金を利用し資金準備を行える保険です。

養老保険

死亡保険と同額の「生存保険」が設定されている養老保保険。こちらは解約せずに保険金を受けとることができます。

死亡、生存どちらの場合も保険金が出る保障が特徴のため、保険料は比較的高くなります。

死亡保険と生存保険が両立した契約で、経費と資産の両面を持った保険です。そのため、保険料の損金と資産、半々で計上されるのが基本です。

満期があるため資金計画を立てやすく、経営者や従業員の退職金など資金計画に利用できます。

ガン保険などの傷病保険

被保険者がガンなどの重大な病気に掛かった場合の経済負担に備える保険です。被保険者を従業員として福利厚生のひとつとすることもできます。

終身保険

被保険者が亡くなる時まで保障が続く保険。必ず死亡保険金がもらえる契約で資産の意味合いが強く、保険料の全額が資産計上されるため損金に計上されません。

損金扱いがないため契約例は少ないかもしれませんが、死亡保険としての機能はあるので、経営者の死亡に備える保険として活用することもできるでしょう。

損害保険

火災による事業財産の損害を補償する火災保険や顧客などに損害を負わせた場合に使える賠償責任保険などの、損害保険に加入する場合もあります。

損害保険の保険料は、満期返戻金など保険積立金が設定されていればその相当額を資産に計上し、残りは損金に算入します。契約内容によっては保険料を貸借料として損金に算入します。

契約内容に資産の意味合いがあれば資産計上される点は生命保険と同じです。

法人保険に加入するメリット

法人が保険に加入するメリットにはどんなことがあるでしょうか。

資金準備が少ない時期からリスクに備えられる

保険は資金が乏しい時期からでもリスクに備えることができます。

経済的な損失に備え、企業はあらかじめ資金を準備しますが、創業当初から潤沢な資金を準備できるとは限りません。資金が少ない時期に打撃を受けると経営は一気に困難なものになってしまうでしょう。

保険に加入していれば保障を受けることができるので、経済的な損失に保険金で備えられます。保険料の負担も経済的な損失と比較すると軽微なものになるはずです。

経費に計上できる

契約の内容にもよりますが、保険料を経費として計上できます。現金を積み上げてリスクに備えるよりも保険に加入した方がメリットがあると言えますね。

企業がさまざまなリスク備え資金を貯めておく内部留保は、納税後に手元に残った資金から行われます。保険もまたリスクに備える対策のひとつですが、保険は経費として計上できるため節税の効果も得られます。

法人保険は、内部留保でリスクに対する備えを行うより資金効率がよいので、第二のメリットと言えるでしょう。

法人保険のデメリット

メリットがあればデメリットもつきもの。さて、デメリットはどうでしょうか。

キャッシュフローの悪化に注意

保険に加入すれば、当然のことながら保険料が発生します。キャッシュアウトが増えるためキャッシュフローが悪化し資金繰りがタイトになることに注意が必要です。

仮に黒字だったとしても、必要な支払いができないと倒産の危険性があり「不渡り」の状態で、重いペナルティが課されてしまいます。不渡りが倒産の理由にはなりませんが、不渡りのペナルティは経営を困難にする可能性が出てしまうでしょう。

保険とはリスクに備えるものですが、キャッシュフローを悪化させる保険契約では経営のリスクとなります。。契約時に資金繰りについて十分に配慮しましょう。

資金計画の柔軟性に欠ける返戻金

契約によっては解約返戻金が設定されているので、返戻金を前提とした資金計画を立てている企業もあることでしょう。返戻金を前提とした場合、現金による資金計画よりも綿密に行わなければなりません。

なぜなら返戻金の額は一定ではなく、保険の解約時期に応じて変動します。解約の時期によっては極端に返戻金が少ないこともありえるので、想定外の突発的な資金需要に対応することは難しいと言えます。

資金の柔軟性の面では保険のデメリットと言えるでしょう。

気を付けたい3つのポイント

法人の保険契約では気を付けておきたいポイントが主に3つあります。

1.返戻金の受け取りは益金

保険金や解約返戻金は、利益に計上されます。保険料支払い時には節税ができていても、保険金の受け取り時は税金が発生する可能性があることに注意が必要です。特に返戻金を前提とし、節税を目的に保険契約を結んでいる場合は、保険の効果を誤認していないか確認しましょう。

仮に法人税を33%、利益が年間100万円の企業が年間保険料100万円(全額を損金に算入)の保険に10年加入し、10年後に返戻金を1,000万円(返戻率100%)受け取るとします。

この企業が保険に加入しない場合は、年間33万円の税負担が発生し、10年間では330万円です。

保険に加入すると年間の利益は保険料で相殺され税負担はなくなりますが、解約返戻金が益金として1,000万円計上されます。これにより330万円の税負担の発生です。

10年間でみると、税負担は保険加入に関わらず330万円となり、保険には節税効果がないことがわかります。

保険に加入するとで税負担の発生時期を遅らせることはできますが、税負担がなくなるわけではないということに留意しましょう。

2.保険金の受け取りを踏まえた規程の作成

法人は保険金の取り扱いを定めた規程を設定しておくことを勧めます。企業に税務調査が入った際に説明の根拠とするためです。

例えば、経営者への退職金の支払いは損金として計上できるので、恣意的に退職金を支払えば利益を自由に操作でき、保険金受け取りの益金も簡単に相殺できます。これは脱税として指摘される可能性のある行為です。

役員の退職金の取り扱いを定めた規程に従い退職金を支払えば、税務調査が入った際に適切な支払いであることを説明できます。

3.法人保険の節税効果に規制

2019年6月に法人保険の保険料損金計上の算入ルールが変更され、損金算入の条件が厳しくなりました。

法人保険は節税ではなく税負担の繰延べと先に説明しましたが、損金算入が難しくなることで繰延べも以前よりしにくくなったことに気を付けましょう。

保険料損金計上の算入ルールの変更点

保険料の損金計上ルール変更点を確認しておきましょう。

返戻率が50%を超える保険に注意

変更点の要旨は「節税目的の保険の規制」。返戻金が大きい保険に加入し、保険料を損金として計上するという手法が規制されました。

返戻率が50%を超える保険が損金算入規制の対象です。そのため、保険料の全額を損金としての計上は不可能となり、一部を資産に計上します。

返戻率が高い保険は企業の負担が少ないため、長期の保険期間が設定できる法人保険は返戻率を100%近くにすることも可能で、企業は実質的な負担なしに損金だけを計上することが可能でした。

この規制により返戻率が50%を超える保険契約は、法人保険の節税効果が薄れたことになります。

返戻率が高いほど資産計上期間が長い

返戻率が50%を超える保険の保険料の一部は資産に計上されますが、資産計上にもルールが設定されています。計上できる期間が定められ、それに応じ算入できる損金の額も変動します。

資産計上期間が長期にわたるほど損金に算入できる金額が少なくなり、節税効果は薄まります。返戻率が50~85%までの保険の資産計上期間は保険契約時から保険期間全体の40%を経過するまで、返戻率が85%を超える保険は契約から返戻率がピークとなる期間までが資産計上期間となります。

返戻率に応じた3つの区分

50%以上の返戻率のある保険は、さらに3つの区分に応じて損金に計上できる額が計算されます。50~70%、70~85%、85%超と3つです。

資産計上期間中はそれぞれの区分に応じて、保険料の一部が資産に計上され、保険料から資産に計上する額を引いた残額が損金となります。

資産計上期間中に企業が支払った保険料の損金算入できる割合は、返戻率50~70%の保険は60%、70~85%では40%、85%超では最高解約返戻率の30%(当初10年間は10%)を損金に算入可能です。返戻金が高いほど損金算入の条件が厳しくなり保険の節税機能が薄れることとなりました。

通達以前に契約した保険は従来どおり

通達以前から該当の保険に契約している場合は、保険料の損金取り扱いルールは従来のままです。返戻金は益金として計上されるので、設備投資や退職金の支払いなど、別の損金計上の手段などを用意します。

税負担の軽減とキャッシュフローを見極め、よりよい選択をしましょう。

保険そのもののメリットで判断

説明したとおり、損金の扱いは厳しいものとなりましたが、保険の魅力は「リスクに対する保障が受けられる」ことです。保険に加入する意義を考え、慎重な経営計画を立てましょう。

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