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個人事業を法人に移行する法人成り。個人事業の廃業届が必要です

公開日:2018年01月21日
最終更新日:2018年04月09日
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個人事業が順調に拡大している場合は、株式会社化をする法人成りを検討してみましょう。法人成りとは、個人事業から法人を設立することを指します。

ただし、個人事業を法人化するにあたっては、法人成りのメリットとデメリットをよく理解することが大切です。

税金面だけでみると、個人事業主は所得に応じて税率が大きくなる所得税(最大45%)が適用されるのに対し、法人は2段階の税率の法人税(最大30%)が適用されるため、年間所得が600万円~700万円になれば、個人事業主より法人の方が節税になるといわれています。

個人事業主の所得税と法人の法人税

個人事業主(所得税) 法人(法人税)
所得195万円以下 5%
所得195万円超~330万円以下 10%
所得330万円超~695万円以下 20%
所得695万円超~900万円以下 23%
所得900万円超~1800万円以下 33%
所得1800万円超~4000万円以下 40%
所得4000万円超 45%
※資本金1億円以下の場合
所得800万円以下 税率=22%
所得800万円以上  税率=30%

逆に、年間所得が600万円~700万円を下回った際は、個人事業主の方が節税となります。また、法人化するには、手間とコストがかかるので、どちらがいいかは個人事業主の経営方針によります。

個人事業主から法人成りのメリット

個人事業主から法人成りのメリットをまとめました。下記を十分に理解しましょう。

  1. 社会的に信用が高い
  2. 金融機関などからの資金調達や融資が有利になる
  3. 事業主とその家族にも給料を払うことができるため節税になる
  4. 給与所得控除が使える
  5. 経営者や家族も社会保険に加入できる
  6. 退職金の支給が可能になる
  7. 必要経費として認められる範囲が増える
  8. 所得が一定以上になれば、個人事業よりも節税となる
  9. 法人設立後2年間は、消費税が免税になる
  10. 赤字の繰り越しが最大7年のため、節税できる期間が長くなる
  11. 決算期を自由に選択できる (個人事業は1/1~12/31)

個人事業主から法人成りのデメリット

個人事業主から法人成りのデメリットをまとめました。メリットと合わせて、後で困らないように下記を十分に理解しましょう。

  1. 法人化にあたり、定款作成や登記など、手間と費用がかかる
  2. 赤字でも法人住民税の納税義務がある(年間で最低約7万円)
  3. 医療保険、年金保険、労災保険、雇用保険など、各種社会保険の加入が必要となる
  4. 法人を運営するための事務処理が増える
  5. 会計処理が煩雑で、厳密性が要求される(会計・税理士事務所などの専門家への依頼が必要になるケースがほとんど)
  6. 所得が少ない場合は、個人事業よりも税金が高くなる
  7. 事業を廃止するときにも手間と費用がかかる

これらのメリットとデメリットを十分理解した上で、経営方針に合う形態を選択しましょう。

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個人事業を廃業する場合の手続き

事業がうまくいかない、体調不良、または事業形態を個人から株式会社にすることなど、さまざまな事情により個人事業を廃業する場合があります。

廃業の手続きは、個人事業の開業手続きと同様に簡単にできます。

  1. 個人事業の開業時に税務署に提出した「個人事業の開廃業等届出書」に、廃業の旨を記入し、税務署に提出。
  2. 青色申告の個人事業主は、「青色申告の取りやめ届出書」を提出。
  3. 消費税の課税事業者の場合は、「事業廃止届出書」を提出。

なお、廃業届けを提出した後の費用については、必要経費にならない可能性があるため、急ぐ理由がなければ、廃業日は年末にするのが無難でしょう

個人事業廃業時の届出一覧

個人事業を廃業する際に必要な届出です。

  1. 個人事業の開廃業等届出書
  2. 青色申告の取りやめ届出書(青色申告者の場合)
  3. 事業廃止届出書(消費税の課税事業者の場合)

廃業届けを税務署に提出しないと、個人事業主のままとなりますので、確定申告が必要となります。確定申告をしないと、税務署などから連絡が来ますので、個人事業を廃業する場合は、必ず税務署に廃業届けを提出するようにしましょう。

万が一債務整理が必要な場合は?

借金が膨らみ、やむを得ず廃業するという場合もあるでしょう。個人事業は個人事業主の信用によって資金を借りているため、法人と違って無限責任となります。個人事業主が責任をもって返済をしていかなければなりませんが、どうしても返済が難しい場合は、自己破産などの債務整理の手続きをとることができます。

また、国が定める以上の金利が発生している場合については、今後の支払いだけではなく、過去の支払い分についても、さかのぼって返してもらうことが可能です。

このような自己破産や過払い金の返却などの債務整理は、自分一人で行うには法律の知識が必要で難しいものです。債権者が怖いという人も多いと思いますので、債務整理を得意としている法律事務所に相談するのが得策です。

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