【日経平均株】急落した原因と今後の影響
公開日:2020年04月02日
最終更新日:2020年04月02日
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2020年3月9日、日経平均株価が2万円割れとなりました。1年2カ月ぶりのことです。この背景には、3つの要因が絡んでいると言えます。
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新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の懸念
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原油価格の急落
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上記2つによる円高の進行
これら3つによって、新型コロナウイルスによる世界経済の悪化・産油国の財政悪化による世界経済の悪化・円高による日本企業の業績の悪化が懸念されたのです。
投資家はリスクオフの姿勢を取り、株式から資金を引き揚げました。引き上げた資金は国債などに向かい、国内債券市場は日本国債10年の利回りが、-0.2%近くまで低下しています。
さらに3月9日夜(日本時間)に開いた米国株式市場では、NYダウの株価が急落し、前週末と比べて2,013ドル安い23,851ドルで取引が終了しました。下げ幅は過去最大です。
またS&P500種株価指数は取引時間中に急落。一時7%超の下げとなりました。これにより、売買を中断するサーキットブレーカーが発動されました。アメリカでサーキットブレーカーが発動したのは、2013年に現在の制度に改正されてから初めてのことです。
米国市場が大きく下がった理由には、日経平均と同じく、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大と原油価格の急落が挙げられます。特にアメリカでは感染が広がっているため、トランプ大統領が景気悪化を懸念し経済対策を検討すると発表しました。その後も感染拡大による懸念が消えず、株式市場では下落が続きました。
WHOのパンデミック宣言を受け株価下落
3月11日、WHO(世界保健機関)がパンデミック宣言を発表し、世界的な流行とそのことによる混乱が正式に認められました。これを受けて、経済活動の停滞がさらに深刻になるとの懸念が広がり、米国株式市場ではダウ30種工業平均などが大幅に下落しました。翌3月12日の東京株式市場にも影響が広がり、日経平均株価は一時1,000円安となっています。
米国株式市場の暴落に加えてSQによって株価が暴落
3月13日も日経平均株価が暴落。ついに17,000円を下回りました。これは、米国株式市場で2度目のサーキットブレーカーが発動するほどの暴落です。投資家の間で不安感が高まったのに加え、3月13日がSQ日とよばれる先物・オプション取引の満期日であったことが影響したようです。
そのため、ストップ安の銘柄が130銘柄を超えました。日経平均株価を構成する国際石油開発帝石(1605)までもがストップ安。また、一部の銘柄では買い注文がゼロになるなど、すさまじい状況となりました。
FRBの緊急利下げとその影響
3月16日朝、アメリカで中央銀行のような役割を果たす組織、FRBが緊急のFOMC(Federal Open Market Committee連邦公開市場委員会)を開き、1.0%の緊急利下げを発表しました。2008年のリーマンショック以来のゼロ金利政策で、政策金利(FF金利)は0~0.25%となり、米国債などを大量に買う量的緩和政策も復活します。これは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による経済の混乱を抑えるのが目的です。
日銀が金融緩和の強化を発表
3月16日正午、日銀が臨時の金融政策決定会合を開き、金融緩和の強化が決まりました。具体的な金融緩和強化の内容は、大きく次の3点です。
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積極的な国債買入れとドルオペの実施
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企業金融支援
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ETFとJ-REITの積極的な買入れ
これら3点に取り組むことで、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済の悪化を食い止めることを目的としています。FRBとは違い、今回は利下げを行わない方針を取ったことにも注目です。これは、今後さらに景気が悪化した場合、金融緩和の余地を残しておくためだと考えられます。
積極的な国債買入れとドルオペの実施では、国債の購入による円資金の供給と、ドルオペによる米ドル資金の供給を行います。ドルオペについては、日本銀行とカナダ銀行、イングランド銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度、スイス国民銀行と協調して行う政策です。
企業金融支援では、新型コロナウイルスの影響で資金繰りに苦しむ中小企業を支えるため、金融機関に最長1年分の資金を金利0%で供給する政策を行います。さらに、大企業が資金調達のために発行するCP(コマーシャルペーパー)や社債も、新たに2兆円の買入れ枠を追加。企業が倒産しないよう、資金面でしっかりとサポートする方針です。
ETFとJ-REITの積極的な買入れでは、ETFは年間12兆円、J-REITは年間1,800億円を上限に買入れを行う予定です。この政策は株価の下支え効果があるため、投資家の不安緩和と、市場を安定させる効果があります。
NYダウが過去最大の下げ幅を記録
3月16日の米国株式市場は、FRBが緊急利下げを発表してからはじめての取引でした。取引開始直後に株価が急落し、3度目となるサーキットブレーカーが発動し、波乱の幕開けとなりました。NYダウの下げ幅も大きく、3月12日に記録した2,352ドル安を超える、2,997ドル安で取引を終えています。一時下げ幅が3,000ドルを超える場面もありました。
NYダウが下がった原因として考えられるのは、新型コロナウイルスの流行拡大による経済の悪化とFRBの緊急利下げによる金融政策の弾切れ感の2つです。
新型コロナウイルスの流行拡大による経済の悪化は、以前から意識されていたことですが、米国で飲食店のテイクアウトのみの営業や、経済活動の停滞が意識されたのが大きかったと考えられます。また企業が社債やCPで資金調達できないリスクも懸念され、今まで以上に景気の悪化が意識されたからでしょう。
米国株式市場の混乱により、日経平均先物も一時400円超安となるなど、日本の株式市場にも影響が及びました。翌3月17日の東京株式市場では、日経平均株価が一時600円安になる場面もありましたが、その後一時500円を超える上げ幅となるなど、乱高下しました。
プラスの要因とマイナスの要因が次々発表されているため、株価の動きが不安定になっているようです。
日経平均株価が反発
3月23日は、日経平均株価が前営業日比+334.95円で取引を終了。東京オリンピック延期検討のニュースや、NYダウの下落といったマイナス材料があったため、多くの投資家が日経平均株価の下落を予想し、意外に感じた人が多かったようです。
投資家の予想に反して日経平均株価が上がった理由は、日銀のETF買いが意識されたからと考えられます。3月16日の日銀の臨時金融政策決定会合で、ETFを年間12兆円分買うと発表しました。当初予定されていた「6兆円」の2倍にあたり、日銀が大量にETFを買うと、ETFに組み込まれている企業の株価が上がることを意味します。
投資家は「ETFに組み入れられている企業なら、株価が上がるはずだ」と考え、そういった企業に投資したと考えられます。マイナス材料が多い中でも、日銀のETF買いが安心材料となり、日経平均株価を押し上げたのでしょう。
今後の日本株は?
冒頭であげた株価下落のきっかけ
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新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の懸念
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原油価格の急落
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上記2つによる円高の進行
この3つの懸念がなくなれば、株価が元に戻ると考えられるでしょう。しかし、日本国内では新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。イベントの中止や消費活動の自粛、経営に苦しむ企業の増加と、先行きの不安感が、日本株の下落につながっているようです。
世界的にも新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、世界全体の景気が悪化をたどることは間違いありません。各国が経済政策を検討していますが、どこまで効果があるかも不明です。将来どうなるか見通せない中で、投資家たちもリスクを取らず株式市場から資金を引き上げています。しばらくは株価の低空飛行が続くでしょう。
今回の下落で保有株の損失が増えた方も多いのではないでしょうか。長期的に見れば、この株価下落は一時的なものなので、焦る必要はありません。
株価が大きく下がったため、PERなど指標面で割安感が目立つ企業も増えてきました。しかし、単純に「割安だから買い」と考えると、判断を間違える可能性があります。新型コロナウイルスの感染拡大によって、企業の成長シナリオが崩れているかもしれないからです。そのため、注目企業の成長シナリオを点検し、シナリオが崩れていないとわかった場合にのみ、投資を考えるましょう。
また、新型コロナウイルスの感染拡大や原油価格急落による悪影響が、すべて織り込まれているとは考えにくいことは確かです。不確実な要素が多く、投資家がしっかりとリスクを判断できないため、もう一段株価が下がる可能性も残っています。これらを視野に入れつつ、慎重に優良株に投資することが必要です。