【新型コロナウイルス】先が見えない 日本経済への深刻な影響
公開日:2020年04月01日
最終更新日:2020年04月02日
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新型コロナウイルスの感染拡大し、経済に深刻な影響が出ています。
国内の大手デパートの中には先月の売り上げが去年の同じ月より10%以上落ち込んだところや、国内で販売された新車の台数も、去年の同じ月と比べ10%大幅に減少しました。
イベントの中止や外出の自粛が続いていることから消費がさらに大きく落ち込むと見られています。
こうした中、中小企業の資金繰りに関する相談が急増し、各地に設けられた相談窓口には5万件に近い相談が寄せられています。
民間の信用調査会社帝国データバンクによると、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2月以降、企業が法的整理を申請したり、事業を停止したりしたケースが増え、経営に行き詰まる企業がさらに増えないか懸念されています。
また、中国からの部品や材料の供給が滞り、一部の企業の生産にも影響が出ている現状です。
景気の先行きへの不透明感が増す中、今年の春闘では賃上げに系芸側の慎重な姿勢が目立ち、賃上げの勢いにブレーキがかかる形となっています。
労働者の景気の実感も急速に悪化し、先月の景気ウォッチャー調査は、景気の現状を示す指数が大幅に悪化。消費税率が8%に引き上げられた2014年4月以来の大きな下落幅となりました。
このため民間のエコノミストの間では、1月から3月までのGDP(国内総生産)の伸び率が2期連続のマイナスとなると見られています。
また新型コロナウイルスの感染拡大により、各国で人の移動が制限され、企業活動が縮小していることから世界経済が減速する懸念が高まっています。
IMF(国際通貨基金)は今年の世界経済の成長率が、過去10年間で最低となった去年のプラス2.9%をさらに下回ると見解を示していますが、世界経済の先行きは見通せない状況です。
自動車部品メーカーは生産調整
新型コロナウイルスの感染拡大は、自動車部品メーカーの生産や売り上げにも影響を及ぼしています。
愛知県一宮市にある志水製作所は、車のスイッチやセンサーなどの金属部品を製造し、大手自動車部品メーカーに納入している中小メーカーです。
しかし新型コロナウイルスの影響で、国内の自動車メーカーが一部の工場で生産を停止したり減産したりしているため、見込んでいた受注が入ってこない状況が続いています。
2月の売り上げは、当初の計画からおよそ1割の4000万円ほど減少し、3月はさらに減少しました。
例年3月は年度末の繁忙期ですが、工場の生産ラインには取引先からの注文待ちを意味する「かんばん待ち」と書かれたボードが掲示され、生産調整を行っています。
志水製作所の志水義幸社長は「感染拡大が長期化すれば廃業や倒産する会社が出て、自動車業界のサプライチェーンが切れてしまう恐れがある。予断を許さない状況だ。政府や県には資金面での手厚い支援をお願いしたい」と話していました。
あらためて注目されるBCPの重要性
新型コロナウイルスの感染拡大で、国内外で工場の操業停止が相次いでいます。そのため、部品の供給網やサプライチェーンへの影響も懸念される中、企業が災害時などに備えて策定するBCP(事業継続計画)の重要性が改めて注目されています。
愛知県北名古屋市にある大橋鉄工は、海外ではベトナムに工場を持ち、車のペダル部品などを生産している自動車部品メーカーです。
2月、ベトナムの工場周辺で新型コロナウイルスの感染者が発生したため、従業員の一部が出勤できず、工場の稼働率がおよそ2割低下しました。
これを受けて会社は、あらかじめ定めていたBCPに基づき部品の製造に必要な金型をベトナムの工場から北名古屋市の本社工場に1週間ほどかけ輸送しました。3月10日から代替生産を始め、減った生産分を補い、4月中旬までの間、生産にあたる従業員の残業を通常より2時間ほど増やし、取引先からの受注に対応しています。
大橋鉄工の大橋雅史社長は「代替生産を事前に検討しておいたことで、安定した供給を続けることができた。感染拡大が続くことの不安は大きいが、不測の事態を想定し万全の備えをとっていきたい」と話していました。
予約のキャンセルが相次ぐ料亭は
新型コロナウイルスの感染拡大で、接待や宴会を自粛する動きが広がっていることから、名古屋市の飲食店では予約のキャンセルが相次いでいます。
名古屋市中区の老舗の料亭「河文」は企業の接待や宴会などで使われる人気店。去年11月に名古屋市で開かれたG20外相会合では夕食会の会場にも選ばれました。
例年3月は、歓送迎会などの予約で埋まりますが、新型コロナウイルスの影響で、3月に入っていた宴会などの予約は9割以上がキャンセルとなり、売り上げが大きく減少しました。
店は少人数客の利用や、仕出し弁当などのテイクアウト商品の販売で売り上げを確保し、営業を続けているということです。
若女将の香川絢子さんは「キャンセルがこれほど出るのは初めて。今は耐え時だと思い、前向きにアイデアを出しながら対応していくしかない」と話していました。
銀行は臨時の融資相談
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、売り上げが減少するなど資金繰りに困る中小企業が相次いでいることから、名古屋市の地方銀行は休業日も店舗を開き、企業から融資の相談に応じています。
名古屋市に本店を置く中京銀行は、休業日だった3月14日、愛知や三重など60余りの店舗を臨時で開き、資金繰りなどに悩む中小企業からの相談に応じました。
なかでも、名古屋市北区の店舗には介護施設や飲食店を運営する企業の経営者らが訪れ、「利用者や売り上げが減少していることから、運転資金を確保するため臨時の融資をお願いしたい」と相談。支店長らが状況を聞き取り、活用できる融資の枠組みを提案していました。
相談に訪れた企業の男性は、「この先も影響が続けば、従業員を削減するなどの決断も迫られる。なんとか少しでもこの状況を解決するため、できることをやっていきたい」と話していました。
中京銀行大曽根支店の瀬林寿志支店長は「リーマンショックや東日本大震災の時と異なり、先が見えない不安が大きく、過去に経験したことのない大変な影響を及ぼす可能性がある。今まで蓄えたノウハウを精いっぱい生かし、相談や資金調達のニーズに応えていきたい」と話していました。