【ESG投資】企業評価の投資手法。本質や背景を解説
公開日:2019年01月09日
最終更新日:2019年01月09日
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近年よく目にするESG投資。ESGとは、Eは環境・Sは社会・Gはガバナンスを意味しています。企業を評価する際に、ESGの取り組みが適切に行われているかを重視する投資手法。欧州から始まったESG投資の考え方は、日本でも浸透してきているとはいえ、その本質をとらえている人はまだまだ少数です。ESG投資の本質とは一体何なのか、解説していきます。
ESG投資が注目される背景
注目のESG投資というキーワード。なぜ、注目されているのでしょう。ESG投資は、2006年に責任投資原則(PRI)が国連の支援が策定されたことから始まりました。2018年6月現在、世界1900以上の年金・保険・運用機関などが署名し、その資金量は合わせて70兆ドル(7000兆円)を超えています。
ESG投資の方法論は、ESGに消極的な企業を投資先から除外するダイベストメントやESGインデックス、ESGレーディングの参照、エンゲージメントなどと、さまざまです。
昨今の国内での大きな動きとして、GPIF(年金積立金管理運用独立法人)がESG指数を採用したことです。2017年7月に国内株式の3%ほど(約1兆円)を組み入れたESG投資が始まっています。
このことに対して興味を持つ企業は多くあります。しかし、経営自体を変えるのではなく、現状をどう報告するかでとどまっている印象です。これでは社会やESGが変化するたびに後追いすることとなり、企業は翻弄されます。大事なのは、一歩引いてESG投資の本質を捉えることです。
ESG投資が生まれた背景
ESG投資が生まれた背景には、資本主義の限界からくる危機感があります。
冷戦構造の終結やグローバル化が進み、低金利・ゼロ金利となって、資本が利益を生まなくなりました。金融の短期主義化・投機的な経済が進み、資本主義の終焉とも言えるでしょう。結果的に経済格差の拡大をもたらし、資本主義は不平等を生みやすいシステムに変貌しています。
その一方で、途上国は経済が発展し、エネルギー利用が増えています。地球環境の容量に限界が達しつつあるのが現状です。それは、異常気象にも表れています。例えば7月に襲った西日本豪雨は多くの人たちの命や生活基盤を奪いました。それだけではなく、工場は部品調達できずに操業停止になるなど、企業にも大きな影響を及ぼしました。このような状況が資本主義に対する不信感を生み、その不信感がポピュリズムを生み出しているのです。
「SDGs」と「パリ協定」
「SDGs」とは2015年に国連持続可能な開発サミットで規定した「持続可能な開発目標(SDGs)」。「パリ協定」とは、2015年に温室効果ガスの排出について2020年以降の各国の取り組みを定めたルールであるパリ協定への合意です。
経済基盤を失う危機感から、世界は2つの国際合意を行いました。この国際合意が目指すのは、環境が守られている・貧困や不平等がない・経済活動が安定する社会です。そして、このような社会を実現するには、システムそのものを変えることになります。
この目標が企業にどうかかわってくるのでしょう。気候変動を例にとって説明します。現在の社会システムを継続していくと、21世紀が終わるまでには気温が4℃上昇すると言われています。それを2℃上昇までに抑えるために、CO2の排出量の上限は1000ギガトンとなりますが、2000年ごろまでにすでに500ギガトン排出しています。あと500ギガトンしか排出できないのです。
この現状を踏まえて、石油を使わない社会へとシフトしていくことが必要でしょう。石油文明からシフトすることは、経済の前提条件そのものが変わることでもあります。
実際にフランスやイギリスでは2040年以降、ガソリン車やディーゼル車の販売を禁止する方針です。
そうなると将来的にどうなるでしょう。エンジン周りの部品は不要となり、自動車関連機器メーカーは大きなビジネスリスクを負うことになります。従来型のエネルギー産業もしかり。すでに風力や水力、太陽光などの再生エネルギーの発電コストは、化石燃料と変わらなくなっています。企業のビジネスモデルは大きな転換期を迎えていると言えるでしょう。
ESG投資の拡充で透明性の高い資本主義形成
世界の多くの企業において、環境と経済の両立であるSDGsに合わせて、多様性・ジェンダー・環境・再分配などに配慮して社会貢献をしていく中で、自社の発展を図る動きがあります。その流れとして、ESG投資の拡充です。
しかし日本の大企業の経営者は、系列会社や出資法人だけに目を向け、一般市民や地域住民、従業員を重要視していません。直近の業績や法人株主の声だけに捉われ、システム全体の変化を見ることができないからです。
本来企業は、社会のあらゆる方面にセンサーを張り巡らせ、社会の変化を読み取り、イノベーションしていくものです。SDGsの取り組みやESG投資が世界の主流となりつつあることを見逃しているとしたら、変化に対する感度は極めて低いと言えます。
今や、未来の行方は集団を形成する個人が自律的な活動をすることで決まっていく時代です。大企業もまた、ESG投資や地域の潮流に応えることに加え、一般市民や地域住民といった、従来のガバナンスでは「お客様」だったステークホルダーや、「使い捨て」として扱ってきた従業員の立場に向き合い、社会と関わっていくべきでしょう。社会や環境、ガバナンスに目配りできる企業活動へとシフトしてくことが必要です。
GPIFによるESG投資と投資先企業のSDGsへの取り組みは、表裏の関係にあると言え、社会的な課題解決が事業機会と投資機会を生む関係となっています。