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個人事業主の確定申告

【法人税】特徴・種類・計算方法を解説

公開日:2020年08月15日
最終更新日:2020年08月15日
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法人化した場合、国が定める法人税を適切な方法で納めることになります。個人にかかる税金と違うことはわかっていても、法人税が具体的にどういうものなのかよくわかっていない、という方もいるのでは。

そこで所得税との違いや法人税について解説します。ここでしっかり理解をして、抱えている疑問や不安解消につなげましょう。

法人税とは

法人税は、個人の所得に応じて課税される「所得税」と根本的に違うため、法人税の特徴と所得税との違いを解説します。

法人税の特徴

「法人」は、法律的に一つの人格と同様の権利や義務を求められます。代表的な法人で挙げられるのは次のとおりです。

・株式会社
・合名会社
・合同会社(LLC)
・社会福祉法人
・一般社団法人
・NPO法人

これらの法人のうち、「事業によって収益を得た際に課税される」のが法人税です。「課税義務が発生する対象」と「税金を納める対象」が同じなので、直接税に該当します。ただし、法人の種類や規模によって課税額が異なるので注意しましょう。社会福祉法人など、利益を目的としていない事業の場合は税金が課されません。

所得税との違い

所得税とは、個人の所得に対して課税される税のことです。具体的には以下のような違いがあります。

法人税

対象期間:事業期間
課税方式 一定税率
申告期限 事業年度終了翌日から2ヵ月以内

所得税

対象期間:1月1日~12月31日
課税方式 :超過累進課税
申告期限 : 2月16日~3月15日

覚えておくべきことは、税金の計算方法が異なることです。所得税は所得が多いほど金額も高くなりますが、法人税は所得の金額は影響しません。法人の規模や種類などの要素を基準に税率が決められます。

法人税の種類は3つ

法人税には大きく分けて3つ種類があり、「事業年度」「連結事業年度」「退職年金等積立金」です。それぞれ取り扱いが異なるため、仕組みを理解しておく必要があります。

各事業年度の所得への法人税

法人税のなかでもっとも多いのが、「各事業年度の所得に対する法人税」です。決算期に税金を申告し、期間内の所得額を基準に納める金額を算出します。

実際に反映する期間は各法人によって異なり、定款の内容を反映するケースがほとんどです。法人が定めた年間所得を計算したうえで、税額を明確にします。

各連結事業年度の所得への法人税

一つの会社を親会社とし、子会社と連結している法人を「連結事業」といいます。その連結したすべての親会社・子会社を一つの組織とし、全体の所得に対して課税します。

この方法を選ぶと、各事業年度の所得を計上する必要がなくなります。選択は法人の意思にゆだねられるため、どちらの方法を選んでも構いません。しかし、連結事業年度の所得を計上する場合は子会社の所得をすべて反映する決まりです。

退職年金等積立金への法人税

退職年金に関する事業を行う法人は、「退職年金等積立金への法人税」が課税されます。信託会社・保険会社といった法人です。

従業員に対して退職年金を支払う時期と、課税される時期には時差が生じます。法人が支払った年度に課税が反映されるのに対し、実際には受け取った時点で課税される仕組みです。

法人税の課税対象となる法人

法人税は、法人格をもつすべての事業が該当するわけではなく、事業で収益を得た法人を対象としています。公益法人・公共法人といった組織の多くは非課税対象です。課税対象になる、ならないといった違いも理解しておくために、課税対象の基準について解説します。

課税対象となる法人

課税対象として扱われるのは、事業を行うことで金銭的な利益を得ている法人です。代表的な法人には以下の種類があります。

普通法人 

・株式会社
・有限会社
・合資会社
・合名会社
・相互会社
・協業組合
・医療法人
・日本銀行
・労働組合
・管理組合

協同組合等

・労働者協同組合
・農業協同組合
・生活協同組合
・漁業協同組合
・信用金庫

ほとんどの法人が課税対象ですが、違う点は協同組合は課税率が軽減されることです。普通法人は資本金額によって軽減されるケースもあります。

課税対象にならない法人

非課税対象として認められるのは、主に3つの法人です。課税されない法人の一部も把握しておきましょう。

公益法人等 

・社団法人
・財団法人
・学校法人
・宗教法人
・社会福祉法人

公共法人

・地方公共団体
・国立大学法人
・国民金融公庫
・住宅整備公団
・日本道路公団
・日本放送協会

人格のない社団

・実行委員会
・同窓会
・PTA

人格のない社団で交付金を受け取っても、営利目的としない場合は納税義務が発生しません。ただし、公益法人などが収益事業を行うと法人税の課税対象です。

法人税の計算方法と法人税率

法人が納める税額は、所得に応じて算出します。申告時に慌てることのないよう計算方法と法人税率について理解しておきましょう。税額の計算式に加え、普通法人・公益法人など種類別の税率も紹介します。

法人税額の算出方法

法人税の計算では所得の金額が基本となります。所得は収益から事業のために費やした必要経費や損金を除いた数字を指します。法人税額を求める計算式は以下のとおりです。

法人税額=課税所得×法人税率-控除額

法人税率

法人税の税率は国税庁によって定められています。法人の種類や資本金・所得金額で区分されているため、該当する税率を把握しておく必要があります。

普通法人  :資本金1億円以下の法人など      年800万円以下の部分   15%
年800万円超の部分    23.20%
上記以外                           23.20%
公益法人等 :公益法人等とみなされているもの  年800万円以下の部分     15%
年800万円超の部分            23.20%
協同組合等 :                 年800万円以下の部分     15%
年800万円超の部分      19%
人格のない社団等:               年800万円以下の部分        15%
年800万円超の部分            23.20%

法人税の節税ポイント

法人税の課税方式は所得税と異なり、一定の金額を超えると税率が上がります。所得に対して課税される点を理解したうえで節税のコツを押さえましょう。法人税の課税額を低減するために覚えておくべきポイントを3つ紹介します。

益金を減らす

益金と損金の差を小さくするために、益金を減らすのも一つの方法。損金に影響しやすい、売上の計上時期に注目し、タイミングを遅らせることで益金の減額につながる可能性がでてきます。

計上の基準として反映できるのは「検収基準」。検収基準であれば納品物が検収されたときに売上として計上します。計上を先延ばしにする形となるため、益金減額につながるでしょう。

損金を増やす

損金自体を増やすことも節約に効果的。具体的には以下のような方法があります。

・赤字の繰り越し
・生命保険料を損金として計上
・社員旅行費用を損金として計上
・在庫の廃棄

赤字を繰り越す際、期間制限があることに注意します。在庫の廃棄には証明が必要なため、むやみに処分しないこ。そのほかに、決算賞与を未払いの費用として計上する方法もあります。損金を増やすためには法人税に関する法律も重要な要素となるため、ルールに則った方法で行うことが重要です。

特別控除を活用する

課税対象となる金額を減らすだけでなく、税金そのものを減額する方法もあります。それは、特別控除を活用し、優遇措置を適用する方法です。主に地方拠点強化税制での雇用促進税制・中小企業投資促進税制の2種類があります。

 

雇用促進税制 :主な条件…特定業務施設(本社機能をもつ施設)の雇用者を増加

適用内容…1人あたり最大900,000円

中小企業投資促進税制 :主な条件…機械などの設備を取得または制作

適用内容…取得金額の30%償却または7%の税額控除
(控除は個人事業主・資本金3,000万円以下の法人が対象)

法人税を納付する方法

法人税を算出後は、期限内に申告・納付を終える必要があります。現金・電子納税・クレジットカードとそれぞれの納付方法について解説します。

現金での納付

管轄の都道府県税務署から納付書が送付されるので、現金で納付にはいずれかの機関で手続きを進めましょう。

・金融機関
・コンビニエンスストア
・管轄の都道府県税務署

バーコードが記載された納付書であればコンビニエンスストアでの納付が可能です。しかし、300,000円以下に限られる点に注意しましょう。金融機関は口座の有無に関係なく手続きできます。

電子納税の利用

電子納税とは、オンラインで納税する方法です。国税庁が運営する「e-tax」にアクセスし、利用登録をした後、納付手続きに進みましょう。公式サイトのほか、財務会計ソフトからの納税も可能です。

ただし、e-taxは24時間利用できません。場合によっては受付時間に納付対応できないケースもあるため、スケジュール調整の可否を確認してから活用するようにしましょう。

クレジットカードの利用

クレジットカードでの納付は、国税庁が指定した納付受託者が運営する「国税クレジットお支払いサイト」を利用すると納付できます。

納税額に応じて決済手数料が加算されるものの、利便性の高い方法といえます。時間や曜日を問わず24時間利用可能です。領収書は発行されないため、必要な場合は金融機関などで申請する必要があります。

法人税に関するQ&A

法人税に関する質問と回答を3つ紹介します。

法人税の納付場所

法人税の納付場所は支払方法によって異なります。都道府県税務署・金融機関・国税庁が承認したWEBサイトや金融機関、所轄の税務署の窓口が代表的な納付先です。ご自身の都合に合わせて、スムーズに済ませられるものを選びましょう。

また、法人税の納税地となるのは登記した本店の所在地です。本店がない場合は、代表の事務所を構える場所となります。会社の規模を問わず、事業所得を得た法人は課税対象となるのが基本的なルールです。

法人税の申告期限

法人税は、決算の当日から2ヵ月以内に申告・納付する必要があります。期限から1日でも過ぎるとペナルティの対象となる可能性があるので注意しましょう。2ヵ月の猶予はあるものの、申告の準備を含めると余裕はありません。

どうしても間に合わない場合は、申告期限の延長を申請しましょう。定時総会をはじめ、いくつかの条件が設けられている点も認識しておきます。申請書は国税庁の公式サイトから入手可能です

法人税の納付期限を過ぎた場合

法人税の納付期限は理由がない限り延滞できません。もしも申告や納付が遅れた場合は次のようなペナルティの対象になります。

・無申告加算税
・重加算税
・延滞税

また、場合によっては申告自体が承認取り消しとなる可能性も。赤字・黒字にかかわらず申告の義務があります。申告や納付が遅れると結果的に出費を増やすことになるため、期日を確認したうえで余裕を準備をしましょう。

 

法人として事業を行う場合、一定期間内の所得に応じて税金を納めます。個人の収入にかかわる所得税とは扱いが異なるため、法人税の概念をしっかり理解しておきましょう。法人税の種類を把握することも重要です。

課税対象となる法人は、税率の計算方法や区分も把握する必要があります。課税額に影響する益金・損金についても認識できると節約につながります。納付期限超過によるペナルティを受けることのないよう、申告から納付までスムーズに進めましょう。

 

 

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