【法人設立】法人の定義や種類、設立方法を解説
公開日:2020年08月29日
最終更新日:2020年08月29日
2596 views
法人は、会社や社団法人だけではなく、労働組合、私立学校、神社も指します。
必要な手続きを行い「法人格」が与えられると、法律上の人とは全く別の社会的な存在となり、法律行為などを行うことができるようになるのです。
今回は、株式会社や合同会社、NPO法人などの法人の特徴と設立方法について解説します。
法人とは
法人とは、人間と全く別の存在である法律上の人格が認められたことをいいます。つまり、会社を設立すると会社の代表者である「人間(自然人)」とは法律上全く別の存在である「法人」ができるということです。
例をあげると、マンションを契約する時には本来なら個人で加入すべき生命保険に、会社の名義で加入できるようになります。
個人事業主との違い
法人と個人事業主は、当然ながらそれぞれメリット・デメリットがあります。自分がやりたい事業の内容に照らし合わせてどちらが適しているか考えてみましょう。
【個人事業主】 個人事業主とは、株式会社といった法人を設立せず、自分で事業を行う個人のことです。一般的には「自営業」と表現しますが、税務では「個人事業主」になります。・メリット 法人を設立するためには資本金が必要となり、登記費用がかかります。一方個人事業主は、税務署に「個人事業の開業・開業等届出書」を提出のみで、初期費用はかかりません。 ・デメリット |
【法人】 法人は株式会社などの法人を設立して法人格を与えられ、代表者とは法律上全く別の存在のこととです。 ・メリット ・デメリット |
法人の種類
法人といっても、株式会社や合名会社などさまざまな種類があり、設立手続きも違います。
会社法における会社は全部で4種類あるので、それぞれの法人の特徴、設立手続きについて説明します。
株式会社
株式会社は、利益をあげることが目的で、株主から資金を集める会社のことです。株主から経営を委託された人が取締役となり、事業を行います。
特徴
株式会社は、経営者自ら出資できます。株主が1人取締役1人でも設立が可能です。個人事業主が法人成りする場合、経営者=株主の「1人会社」が最も多いパターンになります。
設立方法
株式会社を設立するには、定款の認証を受け、登記手続きを行います。
設立費用は25万円ほどで、そのほかに実印の作成費用などもかかります。
設立の手順 ① 会社の基本事項の決定 ② 定款の作成 ③ 定款の認証(公証役場) ④ 登記に必要な書類の作成 ⑤ 設立登記を法務省に申請 |
合同会社(LLC)
合同会社(LLC)は最近増えてきた会社形態で、小規模の事業を行う場合に向いています。
合同会社も株式会社と同様登記が必要ですが、設立費用は10万円ほどです。
特徴
合同会社はお金を出す人が経営者であり「社員」です。
設立方法
設立に必要な手続きは短期間で済ませることができます。合同会社は公証人の認証が必要ないので、4~5日程度で設立登記が可能です。
合同会社の設立登記までの流れ ① 会社の基本事項の決定 ② 定款の作成 ③ 登記に必要な書類の作成 ④ 設立登記を法務省に申請 |
合名会社・合資会社
合名会社とは、無限責任社員のみから成る会社のことで、出資者の全員が「無限責任」を負います。
合資会社は、無限責任社員と有限責任社員から成ります。
特徴
合名会社は、出資者の全員が「無限責任」を負います。
「無限責任」とは、会社が破産した場合、個人の全財産を投げ打ってでも会社の借金を支払わなければならないという大変厳しい責任を意味します。
一方合資会社は、無限責任社員と有限責任社員があり、無限責任社員は合名会社と同じですが、有限責任社員は自分の出資した金額以上の責任を負う必要はありません。
この点で比較すると、合資会社は「所有と経営の分離が進んでいる」といえるでしょう。
ただし合名会社も合資会社も、無限責任社員の責任は大変厳しいことには変わりはありません。
会社が破産した時の弁済責任は、会社の債務が消滅しない限り存在します。
そのため、合名会社や合資会社を設立する際は、相当の覚悟が必要ということを肝に銘じましょう。
設立方法
設立方法は、株式会社等と同様定款の作成など必要になります。定款には有限責任社員・無限責任社員を明記することと、損益の分配割合を決めることが必要です。
合資会社・合名会社の設立登記までの流れ ① 会社の基本事項の決定 ② 設立時社員が出資者となり、出資金を準備する ③ 損益の分配割合を定める ④ 業務執行社員・代表社員の選任 ⑤ 定款の作成(有限責任社員・無限責任社員を明記、認証は不要) ⑥ 出資金の払込 |
NPO法人
NPO法人とは、非営利の法人のことで「特定非営利活動促進法」に基づいて、認証を受けた団体のことをいいます。
NPO法人の「非営利」とは、「事業収益から諸経費、人件費を差し引いて利益が残った分は、次の活動に使う資金とする」という意味のため、NPO法人も収益を上げることができます。
特徴
NPO法で掲げられる「特定非営利活動」については、(1)保健、医療または福祉の増進を図る活動(2)社会教育の推進を図る活動など、20の活動内容が規定されています。
20項目すべての活動を行う必要はなく、1項目以上で当てはまります。
具体的には、被災地復興支援・動物保護活動・難民支援などのボランティア活動や、学童保育・介護施設・託児所などの社会貢献活動などが挙げられます。
①保健、医療又は福祉の増進を図る活動 ② 社会教育の推進を図る活動 ③ まちづくりの推進を図る活動 ④ 観光の振興を図る活動 ⑤ 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動 ⑥ 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動 ⑦ 環境の保全を図る活動 ⑧ 災害救援活動 ⑨ 地域安全活動 ⑩ 人権の擁護又は平和の推進を図る活動 ⑪ 国際協力の活動 ⑫ 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動 ⑬ 子どもの健全育成を図る活動 ⑭ 情報化社会の発展を図る活動 ⑮ 科学技術の振興を図る活動 ⑯ 経済活動の活性化を図る活動 ⑰ 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動 ⑱ 消費者の保護を図る活動 ⑲ 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動 ⑳ 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動 |
設立方法
NPO法人を設立するためには、多くの手続きが必要で時間もかかります。
NPO法人の設立登記までの流れ ① NPO法人の概要の決定 ② 申請書類の作成(設立趣旨書など) ③ 所轄官庁に設立認証申請 ④ 申請書類の縦覧期間(2カ月) ⑤ 所轄官庁による申請内容の審査(2カ月) ⑥ 設立認証決定 ⑦ 法務局への設立登記申請 ⑧ 所轄官庁へ設立登記完了届出書の提出 |
一般社団法人
一般社団法人は社団法人の一種で、営利を目的としない「非営利」法人です。必ずしも「公益」を目的とする事業内容の必要はなく、事業目的に制限はありません。一般社団法人は、非営利型と非営利型以外に分類することができます。
一般社団法人のうち、公益法人認定法によって認定を受けた団体が公益社団法人です。
特徴
一般社団法人には、通常社員で構成される「社員総会」、理事で構成される「理事会」、業務監査・会計監査などを行う「監事」があります。
理事は、社員総会の決議に基づいて業務執行を行う必要があります。また、社員総会にかける議案について審議を行うのも理事の業務です。
設立方法
一般社団法人は、所轄庁の認可や認証を受ける必要はなく、登記のみで設立できます。
1~4週間ほどで設立でき、他の法人と比較すると短い期間で設立が可能です。ただし、社会的な知名度や信用度は低いというデメリットがありあす。
社会福祉法人
社会福祉法人は、社会福祉法に基づいて設立され、社会福祉事業を行うことを目的とした法人をいいます。
「社会福祉」とは、貧困者や心身に障害を持っている人に対して、さまざまな支援を行うという意味です。
具体的な事業は、社会福祉事業、公益事業、収益事業の3つに分類されます。
社会福祉事業:社会福祉施設等の入所者に対する救護や医療サービス、在宅サービス
公益事業:有料老人ホーム 収益事業:事業から上がった収益を社会福祉事業や一定の公益事業に充てることが目的で行われる事業 |
特徴
社会福祉法人は、民法で規定された公益法人を発展させた「特別法人」です。特徴として(1)行う事業について公益性を持っていること(2)営利を目的としないこと(非営利性)などが挙げられます。
社会福祉法人の理事や監事は、その他の職員とは異なる地位にあり、社会福祉法人ごとにさまざまな報酬体系が採られているのが特徴です。理事長に対しては役員報酬が支払われる定めですが、その他の理事や役員については一定の役員報酬ではなく、出席回数に応じて報酬が支払われる仕組みになっています。
設立方法
社会福祉法人と設立するためには、大きく4つの手続きが必要です。
社会福祉法人の設立登記までの流れ ① 設立準備手続き設立準備会の発足や事業計画の作成 ② 定款の作成 ③ 所轄官庁の認可(都道府県知事や厚生労働省の認可) ④ 設立手続き |
法人にはさまざまな種類があり、認証を受ける必要がある場合や設立手続きも煩雑で多くの書類を準備する必要がある場合があります。
法人の形態や規模によって税制上のメリットがある場合もあるので、設立前に事業目的に合致しているか検討するとともに、税制上のメリットについてもしっかり理解しておきましょう。